ごあいさつ
新井 紀子
ARAI Noriko
一般社団法人教育のための科学研究所
代表理事・所長
大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構
国立情報学研究所
社会共有知研究センター長・教授
リーディングスキルテストは、国立情報学研究所を中心とした研究チームが、大学入試を突破する人工知能(AI)の研究を通して開発した、基礎的読解力を測定するためのテストです。
2018年7月末までに約6万5千人を対象として本テストを実施した結果、中学3年生のうち、推論では65.1%、同義文判定では43.7%、理数系の定義を理解できるかを問う具体例同定問題では、実に70.7%の生徒がランダム並み、言い換えると「ほとんどできていない可能性が高い」ことがわかりました。リーディングスキルテストで測る基礎的な読解の能力値は、高校の偏差値と極めて高い相関(0.80〜0.88)があることも新たに発見されました。つまり、本テストで測る読解力は、進路を大きく左右するのです。
「よく問題を読んでごらん」と指導をしても腑に落ちない顔をしている生徒が相当数いる、と感じている先生や保護者の方は少なくありません。彼らはやる気がないのではなく、教科書を読めていないのかもしれません。そういう生徒を早期に発見し、適切な読解指導をするためには、リーディングスキルテストのような読解力診断テストは不可欠だといえるでしょう。
一般社団法人 教育のための科学研究所
21世紀の知識基盤社会では一生を通じて知識やスキルを学び続けることが必要となり、そのためには義務教育である中学校の教科書の内容を正確に読み取る力が重要な基盤の一つであると考えます。
また、デジタライゼーションにより新たな職業が創出される一方、日本の労働人口の約49%が就いている職業が10~20年後には人工知能やロボットなどで代替可能になるとの推計結果も出ています。こうした時代の変化に即して教育をデザインするためには、特定の理念やいくつかの成功事例だけでなく、大規模で客観的なデータに基づく科学が必要です。しかし、ひとつの研究グループや企業が収集できるデータには限界があるため、教育に携わる公的機関、企業、団体、研究者の幅広い連携が求められています。
このような背景から、知識基盤社会において核心的な学力である「読解力」を科学的に診断し、人々、特に次世代を担う子どもたちの読解力を高め、日本の教育の質的向上に取り組むため、以下の活動を産学協同で行う、「教育のための科学研究所」の設立準備のための協議会を組織し、活動して参りました。(*1)。
- 生徒が教科書の内容を正確に読み取れる力を測る 「RST」を企画 ・実施し、テスト結果のデータに基づいて「なぜ読めないのか」という理由を分析する。
- 読解力の高低に関する要因の特定、診断方法の開発等を通じて欠けた部分を補う教育方法を考案し、読解力を向上させる。
- 「RST」の実施結果に関するデータベース等の作成および開発支援を行う。
その後、2017年7月11日に準備協議会の活動を継承した、「一般社団法人 教育のための科学研究所」を設立し、活動を継続しております。
(*1)
国立情報学研究所ニュースリリース(2016年7月26日)
文章を正確に読む力を科学的に測るテストを開発/産学連携で「読解力」向上を目指す研究を加速
http://www.nii.ac.jp/news/release/2016/0726.html
本法人の事業
- 「読解力」の定義確立、問題開発、試験実施、データ収集、他テストとの関連性分析
- 「読解力」の意義普及、試験の普及促進、社会的有用性の確立、講演、出版、HP情報開示、広報活動
- 「読解力判定」サービスの提供、読解力向上指導についての情報提供
- 前各号に挙げるものの他、当法人の目的を達するために必要な事業
役員名簿
代表理事 | 新井 紀子 | |
理事 | 髙宮 敏郎 | 学校法人高宮学園 代々木ゼミナール 副理事長 |
理事 | 髙垣 浩史 | 東京書籍株式会社 常務取締役 教育DX局長 |
理事 | 山田 武士 | 近畿大学 情報学部 教授 |
理事 | 高田 真行 | 株式会社NTTデータ コンサルティング事業本部 部長 |
理事 | 羽田 昭裕 | BIPROGY株式会社 エグゼクティブフェロー |
理事 | 石垣 政博 | 株式会社野村総合研究所 コンサルティング事業本部 グループマネージャー |
理事 | 永濱 詩朗 | 株式会社東洋経済新報社 出版局 局次長 |
理事 | 眞崎 大輔 | ALL DIFFERENT 株式会社 代表取締役社長 |
監事 | 角 隆一 | 一般財団法人テレコム先端技術研究支援センター 常務理事 |
監事 | 三浦 智康 | アズビル株式会社 取締役 |
研究成果
「教育のための科学研究所」では、研究成果を随時、論文、オピニオンペーパー、書籍、プレスリリース等の形態で公開しています。
最新の研究成果につきましては、研究成果ページよりご確認ください。