管理職を対象に講演を行いました(板橋区教育委員会)

 

4月4日(木)に板橋区教育委員会で開催された「平成31年度『読み解く力』説明会」において、本研究所所長・代表理事の新井紀子が「『読み解く力』を支える基礎的読解力の育成について」と題して講演を行いました。

1月30日の第3回区長記者会見で発表されたように、板橋区は2019年度から3年計画で全区立小中学校(74校)にリーディングスキルテストを導入し、本テストの実施を通じて子どもたちに必要とされる「読み解く力」の育成に力を入れ、子どもたち一人ひとりの学力定着・向上をめざしています。

「平成30年度第3回区長記者会見」開催(平成31年1月30日)

新井の講演では、最近のAI(人工知能)研究から明らかになった人間とAIの違いをお話し、AI時代を子どもたちが生きぬくためには基礎的読解力を育むことが重要であることをお伝えしました。

子どもたちが自学自習できるようになるためには、RSTの「同義文判定」と「推論」が必須の能力になります。「同義文判定」ができないと、記述式のテストの採点が一人ではできず、先生の模範解答と一言一句同じにならないといけないと思い、すべて書き直してしまいます。また、「推論」ができないと、学んだ事柄をつなぎ合わせて新しい知識を獲得することができず、すべてを暗記していくしかありません。

ただ、RSTはあくまでも診断を目的として開発したテストなので、RSTの結果を良くすることをめざすのではなく、子どもたちが教科書をひとりで読んで意味を理解できることを目指してほしい。それが、公教育の最重要課題であると強調しました。

今回の「『読み解く力』説明会」には、年度初頭にも関わらず全区立小中学校の管理職(校長・副校長)およそ150名の参加がありました。

今回の講演にさきがけ、教育委員会から参加される先生方には事前課題が課されていました。その課題の内容は、「読み解く力」に関して子どもたちがどのような誤読をしているのか、文の理解ができているのか、などの状況について具体例をあげて回答するものでした。

講演のあとのワークショップでは、今回の講演内容をふまえて「学びのエリア」(板橋区では、小中学校の連携を密にするため区立小学校を区立中学校単位に分けて、「学びのエリア」と呼んでいます)の先生方で集まり、持ち寄った事前課題をもとに子どもたちの状況についての報告しあい、小学校6年生までにどのような準備をさせてから中学校に来てほしいのかを協議しました。

ワークショップの後、ある校長先生が、子どもたちの基礎的読解力を育成する必要性について校内で「危機感」を共有していきたいとおしゃっていました。時間は限れていましたが、管理職の先生方の間で基礎的読解力の重要性と子どもたちがおかれている状況についての問題意識を共有していただけたと思っています。