導入事例

筑紫女学園大学

リーディングスキルテストを
受験生の学力の指標とする

筑紫女学園大学では、2019年度のCJアドミッション・ポリシー型選抜からリーディングスキルテストを導入されています。導入された経緯や継続してご利用いただいている理由について、筑紫女学園大学 連携推進部 入試・広報班の生島勝也様・久米郁子様にお話を伺いました。

学力の基礎となる読解力を測る

—年内入試にリーディングスキルテストを導入した経緯を教えてください。

本学はさまざまな入試があり、2019年度の総合型選抜のCJアドミッション・ポリシー型選抜(特待生制度のある育成型入試)で最初にRSTを利用しました。

当時話題になっていた、新井先生の『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』を読んでRSTを知りました。これからの時代は多様な視点で柔軟に物事を捉え、自らが考え表現していくことがより求められますが、そのカギとなる能力は「読解力」にあるのだと思います。大学に入学して学ぶ上での基礎となる力が身についているかを測るために、大学入試にリーディングスキルテストの導入を決めました。

—昨年、学校推薦型選抜や総合型選抜といった、いわゆる年内入試と呼ばれている入試で、学力を問う試験を課した大学があったことが大きな話題となりました。リーディングスキルテストは、そのような学力を問う試験ではないと文部科学省に確認してあります。

受験生からリーディングスキルテストについて問い合わせを受けることはよくあるのですが、最近では、他大学さんからも問い合わせを受けることがあります。そのような場合は、貴所のホームページを見るようにお答えしています。

リーディングスキルテストを入試で使うのがあたり前に

—貴学ではリーディングスキルテストを5年間継続して取り入れていらっしゃいます。

当時、学校推薦型選抜では学力試験を課していない選抜区分と小論文や基礎学力確認テストを課す選抜区分とに分かれていたため、これを統一する目的がありました。そこで、リーディングスキルテストを全員に課すことで、学力の基礎である読解力を測り、学力の3要素のうち「知識・技能」に加え、「思考力・判断力・表現力等」を評価することにしました。

2020年度からは、CJアドミッション・ポリシー型選抜以外の総合型選抜、そして学校推薦型選抜でもRSTを取り入れ、本学の学校推薦型選抜と総合型選抜の全ての受験生がRSTを受検しています。

—リーディングスキルテストを幅広く利用されている理由をお聞かせください。

導入当初は学内で慎重論も出ました。ただ、実際に入試で利用したところ、学内で特に問題になることはありませんでした。読解力の重要性が学内に浸透していったことも大きいと思います。また何といっても、入試を一律にできるメリットが大きく、RSTの導入を増やすことができました。現在はすっかり定着して、入試にRSTを利用することが当たり前になっています。

—リーディングスキルテストに加えて小論文なども実施されていますか?

学校推薦型選抜などで小論文等を課すことについて、いろいろ検討はしたのですが、リーディングスキルテストだけ進めることとなりました。限られた予算の中で、受験生の学力の指標となるテストとしてRSTは適切だと考えています。なお、CJアドミッション・ポリシー型選抜では、試験科目にプレゼンテーションやグループワークも課しています。

合理的配慮を入試でも行う

—合理的配慮が必要な場合の受検についてもお聞かせください。

本学では、障がい学生支援室を設置し、障がいのある学生への合理的配慮などの修学支援を行っています。入学試験においても、そのような合理的配慮が求められるわけですが、RSTでは試験時間を延長するという形で対応してもらっています。通常の受検者と試験時間が異なるので、別室での受検としています。RSTの場合は、パソコンのほかにiPadなどのタブレットを使って、画面をタッチしたり、拡大したりすることでマウスを使わずに受検できるのがよかったです。これまでいくつかのケースがありましたが、どの場合でも受検に大きな問題はなく利用できています。

読解力を伸ばして出口支援につなげる

—今後のリーディングスキルテストの活用についてご計画がありましたらお聞かせください。

今のところRSTの利用は入試のみですが、入学後に読解力について何かカリキュラムを作りたいという思いはあります。3年生でまた受けてもらうなどすれば、入学後からの読解力の伸びや学力との相関の分析もできると思っていますが、なかなかそこまで行きつかないのが現状です。

—私どもでは、2024年度からRSTの受検結果の個票を追加費用なしで提供しています。個票には自分がどこが読めているか、いないかなどのアドバイスも載っています。その個票をノートに貼り、RSノートとして学習に活用しているところもあります。

読みの特性や苦手な部分を自分で認識することは大切ですね。入学後プログラムとして何か行いたいと考えていたところでもあるので、個票を各自に配布することも検討したいと思います。

—読解力の重要性が高まってきたことで、RSTを採用試験のひとつに導入する企業が増えています。学生が読解力を伸ばすことで、出口となる就職活動の支援になるのではないでしょうか。

確かにそれは大切な視点だと思います。就職活動をする学生を見ていると、例えば、入社試験にSPIがあればSPI対策を、というように、必要に応じて勉強しているように感じます。読解力が社会で求められていることが数値的なものでわかると、学生へ説明するときの根拠になって、より伝わりやすくなるのではないかと思います。本学の進路支援センターとも情報を共有したいと思います。

—企業が読解力を重視しているとわかる指標として、当研究所の構成企業であるALL DIFFERNT株式会社が公開しているアンケートがありますのでご紹介いたします。

生産性向上の鍵「ビジネス読解力」とは

ありがとうございます。学内にて読解力の必要性について共有する指標として使わせて頂きたいと思います。