活動報告

大阪府和泉市で講演を行いました

 

10月27日(木)に大阪府和泉市で開催された「令和4年度 第2回 リーディングスキルテスト活用研修会」において、当研究所主席研究員の菅原真悟が研修会講師を務めました。
研修会はオンラインで開催され、市内の小中学校の先生方の参加がありました。

和泉市は今年度、中学生と先生方がRSTを受検し、その結果を分析・活用し、授業改善・学力向上をめざしています。

 研修会では、当研究所代表理事・所長の新井紀子の『AIに負けない子どもを育てる』の10章「大人の読解力は上がらないのか?」をもとに、読解力を身に着けることの重要性について解説を行いました。

 そのうえで、今回のRST受検結果の分析をもとに、生徒が抱えている課題について説明し、生徒の読解力を高めるために、教員がどのような点に注意して教科書を読んで授業を行えばよいのかを解説しました。

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F-labo 9月例会を開催しました(rst-laboふくしま)

9月24日(土)にrst-labo ふくしま(通称:F-labo)の9月例会が郡山市労働福祉会館で開催されました。

 今回のF-laboでは、相馬市立桜丘小学校の加藤政記教頭より、今年度4月に赴任してからの様々な取組を「RSを視点にした授業改善と読解力向上の取組 ~とにかくいろいろやってみる~」と題してお話しいただきました。

 4月からの6カ月間、加藤先生は以下の6つについて取り組まれてきたそうです。

1 RSTガイドブック・RSペンの作成

  転入職員に対し、RSTへの理解を図るために、RSTのテスト設計や6つの問題タイプが分かるガイドブックを作成し配布した。6つの問題タイプを色分けし、カラーボールペンで教材研究する。

 

←RSペン

 

 

 

                      

 


2 チャレンジタイム(視写)の取組

  朝の帯時間を活用し、視写に取り組む。3分間で、正確にたくさん写すことを条件とする。誤字・脱字の確認をし、何文字書くことができたかを振り返る。視写を通して「時間内に書くこと」を意識させるだけでも、授業でめあてを書くときに全員がそろって書き終えることができるようになってきた。

(2年生の目標文字数は100文字。1回目平均77.4字。9/22現在、平均98.9文字)


3 学力向上推進委員会だより

  相馬市研究指導員会の内容や、校内授業研究会の成果と課題等について、この便りを通して全職員で共有する。 


4 その他(掲示物・新聞活用)
  作成したRSやってみましたシートを印刷室に一覧で掲示し、授業改善につながるヒントを得ることができるようにする。RSを子どもたちが意識できるような掲示を作成する。小学生新聞の記事を要約させ、丁寧にフィードバックする。テストや家庭学習においても、授業で学んだ読みのスキルを活用して読めているかを確認し価値づけしていく。

←廊下の掲示物に挑戦している児童たち

 「て」「に」「を」「は」「へ」「が」等の文字を マグネットで貼れるようにしておく。

  

 

 

 

 

 

 

 

5 授業研究会の実施

授業公開等の事前検討会では、教科書の内容を、それぞれの教員がRSの視点で教材分析をする。6つの問題タイプを色分けし、教科書のコピーに書き込むようにする。それぞれの教材分析を比較検討することで、先生方のRSの理解と教科書を読む精度が高まるようにする。

 

6  今後の取組(RSウィークの設定「互見授業週間」)

  授業参観し、授業の中にある「リーディングスキル」を見出だし、気付いたことを授業者にフィードバックする。→RSへの理解を深める。


 加藤先生の発表には、RS向上に結びつく数多くのヒントが散りばめられていました。それぞれの学校で取り入れられることを、今日から始めてみませんか?

 

 

 

 


F-laboのロゴマーク。たちあおいの花言葉:「大望」「豊かな実り」。

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燕市教育委員会で講演を行いました

8月8日(月)、燕市教育委員会の「研究主任会」において当研究所上席研究員の目黒朋子が講演を行いました。

今回の講演では、教員がRSTの6分野7項目を使って解像度高く教科書を読むとはどういうことなのかをワークショップを通して先生方に体感していただきました。

使用した教科書は、教育出版「中学社会 地理 地域に学ぶ」の168~169ページと、東京書籍「小学5年社会 わたしたちの生活と食料生産」の116~117ページです。

※    教育出版「中学社会 地理 地域に学ぶ」の模擬授業については、当ウェブサイトのこちらをご覧ください。


先生方が普段何気なく読んでいる教科書ですが、「その一方の「その」とは何を指していますか?」、「食品廃棄量と食品ロスは同じ意味ですか?」など、あらためて問われると、ほとんどの先生方が戸惑います。そこで、教科書見開き2ページをどのように読み解くか、読み解く際にはRSTのどのスキルを使うのかなど、具体的に例を示しながらワークショップを進めていきました。

【受講者の感想】

・ワークショップの中で、教師自身が「文章を正しく読み取れていないこと。」「小学校の教科書に出てくる語句の意味を正しく理解していないこと。」を実感した。

・「解像度高く教科書を読む」ということがどういうことか、難しかったが、非常によく理解できた。

・本時の目標を達成させるためにどうアウトプットさせるかを意識しながら授業を進めることで、読解力は育まれていくと感じた。

・児童の読解力の前に、教師自身が教科書を6分野7項目の視点で読み込むことが必要であると改めて気づかされた。

・今まで以上に児童の視点で教科書を読み、RSTを意識した授業づくりに励んでいこうという気持ちが高まりました。

・教師が脳に汗をかいて授業の準備することが、子どもたちの可能性につながっていくことを教わりました。

 

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富山県立山町教育委員会で講演を行いました

7月29日(金)富山県立山町町民大ホールで開催されたRST解説会で、当研究所主席研究員の菅原真悟が講演を行いました。解説会は、密にならないように町民大ホールで開催され、町内の全小中学校の先生方およそ130名の参加がありました。

立山町では、今年度から「『読解力』向上3か年プログラム」を開始し、児童・生徒の読解力の向上に取り組んでいます。

解説会では、まず読解力を身に着けることの重要性について、菅原の体験をもとに解説を行いました。

 そのうえで、小学5年生から中学3年生全員が受検したRSTの受検結果から、どのようなことが読みとれるのかを報告いたしました。

 また、児童生徒の読解力を高めるために、教員がどのような点に注意して教科書を読めばよいのか、普段の授業でどのような点に気を付ける必要があるかを、社会科の教科書を例にとって解説しました。使用した教科書は東京書籍の『新しい社会歴史』122~123ページと、東京書籍の『新しい社会地理』の58~59ページです。係り受け(主語と述語はどれか)や照応(指示詞が指すものは何か/省略された語句は何か)を意識して読むことや、児童生徒にとって親密度の低い語句に注意することなどのポイントをお伝えしました。

 質疑応答では、当初予定の時間を超過するほど質問があり、先生方の関心の高さが感じられました。

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RSTを導入した企業で研修を行いました。

4年前からRSTを社内研修の一環として導入している上場企業において、中間管理職の方を対象とした研修を行いました。

中間管理職は、部下から上がってくる日報・週報・報告書・企画書・設計書、外部から届いた仕様書・報告書・提案書など大量の「文書」に目を通します。「内容が伝わらない、わかりにくい文書」の割合が多いと、意図や内容を書いた本人への聞き取りや文書添削に多くの時間を割かざるを得ません。そのことが、中間管理職の忙しさに拍車をかけ、生産性向上を阻む隠れた要因になっています。テレワークやDXを進めようとする中で、まさにそこがボトルネックになっている、と悩む組織は少なくないのではないでしょうか。

上場企業のホワイトカラーの圧倒的多数は大卒です。説明文の書き方くらい、学校で学んでいるはず、と思われるかもしれません。しかし、中高では説明文を書く機会はほとんどありません。大学では成績評価のためのレポートはあっても、朱入れや書き方指導までは手が回りません。理系の場合、各研究室で論文指導が行われていますが、年々就職活動期間が長くなり、十分な指導ができないのが現実です。

「内容が伝わらない・わかりにくい文書」に対して、「これでは意味がわからないだろう」「SNSばかりやっていないで、もっと新聞や文学を読め」といった叱責や、逆に、上司が全部書き直してやる、といった対応では、部下はどう修正すればよいのかがわかりません。

今回は、「文章苦手克服のための20時間トレーニング」と題して、(インセンティブがある部下であれば)20時間程度で書き方の向上が見込める具体的かつ定型的指導の方法を伝授し、ご好評いただきました。

実際に「わかりにくい文書」を見せて頂きましたが、RSTの結果と相関しているところが大変興味深かったです。

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北海道八雲町教育委員会で講演を行いました

7月27日(水)、『令和4年度八雲町確かな学び推進会議「八雲町学びセミナー」』において当研究所上席研究員の目黒朋子がオンラインで講演を行いました。

 八雲町教育委員会では昨年度より小学6年生から中学3年生まで(今年度は小学5年生から中学3年生まで)悉皆でRSTを受検しており、今回の講演は、昨年度に引き続き行われたものです。

 講演では、まず、昨年度と今年度の受検結果を比較したデータ分析について説明を行いました。
すべての学年で能力値に伸びがみられましたが、箱ひげ図を見ると、それぞれの分野の分散が大きいことが分かりました。
苦手分野(5段階評価の1)を持つ児童生徒がいることも考え合わせると、分散を少なくし、中央値をあげていく必要があることも分かりました。
講演では、学年ごとの分析結果について解説しましたが、児童生徒の個別のデータについても各種学力調査の結果とRSTの受検結果の相関を見るなど、分析結果を指導の改善に反映させていくことも重要であることをお伝えしました。

 次に、板橋第二小学校の山田禎文先生が考案した授業案をもとに、リーディングスキルを活用した授業づくりについて説明を行いました(下記リンク先参照)。
使用した教科書は「小学社会5」(教育出版)の156~157ページです。教科書見開き2ページには、本文だけではなく、写真やグラフなどの資料、問い、コラムなどが載っており、それらの多様な情報を本文と結び付けて読み解く必要があります。
大学共通テストにおいても、あらゆる科目で図や文章などの複数の情報を踏まえて関連を読み解く問題が増えています。小学校の段階から、教科書見開き2ページの内容をリーディングスキルを使って読み解き、自らの考えをまとめていく訓練が必要であることは言うまでもありません。(参照:板橋区学びのエリア「板橋のiカリキュラム開発重点校」研究授業が実施されました。)
リーディングスキルは学習の基盤となる“学習スキル”の一つです。児童生徒がリーディングスキルを生かして問題解決できる授業づくりを「教科書」を使ってすべての教科で取り組むことが重要であることをお伝えしました。

 最後に、目黒から、ねらいを考えずに、子どもと同じ気持ちで教科書の文章に向かい、教員一人ひとりが「教科書を使い倒す授業」を改めて考えることを日々の授業づくりの中で行ってほしいとアドバイスしました。

○板橋区学びのエリア「板橋のiカリキュラム開発重点校」研究授業が実施されました。(2020年12月5日)

 

 

 

 

 

 

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いわき市総合教育センターで講演を行いました

7月25日(月)、いわき市総合教育センターの「授業改善講座」において当研究所上席研究員の目黒朋子が講演を行いました。

 講演では、「リーディングスキルを育むための授業づくり」と題し、RSTの6分野7項目についての説明と、目黒が主宰している「rst-laboふくしま(通称:F-Labo)」での様々な実践発表を例に、「リーディングスキルを活用した授業づくり」とは具体的にどういうことなのかをお伝えしました。
そして、教員が教科書の文章やグラフや図をRSTの6分野7項目の視点で読むことは、「子どものつまずきや困難さを予測できる」⇒「教員の指示や発問が変わる」⇒「授業が変わる」という授業改善に結びつくことをお伝えしました。

 講演の後には、「授業づくりワークシート」(福島県教育庁義務教育課「リーディングスキル向上実践事例集」より)を使ったワークショップを行いました。
先生方には、実際の教科書を読み、「授業づくりワークシート」の「親和性の低い(なじみのない)言葉」、「音読の際の注意点」、「RST(6分野7項目)の視点」の各項目に落とし込んでいくという作業を行っていただきました。

 今回の講座の「めあて」は、「脳に汗をかく」というものでしたが、「久しぶりに頭をフル回転させ、脳に汗をかいた。」、「教科書の活用の仕方も理解できた。」、「まずは自分自身が解像度高く教科書を読めるようにしたい。」、「演習を行うことで、読み解く際の子どもの立場からのつまずきがわかった。」、「リーディングスキルについてさらに学びたい。」、「新井紀子先生の著書を読んでみたい。」などの感想が寄せられました。

 

当日の様子は、いわき市総合教育センターのウェブサイトにも掲載されています。
○いわき市総合教育センター
授業改善講座「リーディングスキルを育むための授業づくり」

 

 

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島根県立横田高等学校で講演を行いました

6月27日(月)に島根県立横田高等学校において、当研究所上席研究員の目黒朋子が「AI時代に求められるリーディングスキルとは」と題した講演を行いました。
横田高校では、学校全体で読解力の向上のための体制づくりを行い、すべての教科でRSTの結果分析に基づいた学習指導を行っていくという計画のもと、昨年度は1・2年生が、今年度は全学年の生徒と先生方がRSTを受検しました。

 講演では、まずAIの特徴やRST開発の経緯をお話し、AI・DX時代になぜ読解力が求められるのかを昨年度の数学の共通テストを示しながら説明しました。また受検結果の分析方法を紹介するとともに同校の生徒の結果について、具体的にデータをグラフに表し解説しました。特に、分散が大きい分野については、日々の授業の中で読解力を育成する観点を入れて授業を行い、分散を小さくし平均を挙げていくことが大切だとお伝えしました。

 次に、教員が「解像度高く教科書を読む」ということはどういうことなのか、実際の教科書の文章を提示して、RSTの6分野7項目のどのスキルを使って読めばよいのかをお伝えしました。また、教科書は教科による独特な表現もあり、生徒によってそれが読解を困難にしている可能性があります。特に、高校の場合には、先生方の専門性が高くなるため、他教科の教科書を読むことは少なく、生徒の困難さを理解できない可能性があることもお伝えしました。

 最後に、板橋区教育委員会や福島県教育委員会で実践されている、授業実践事例について紹介し、授業をRSの視点で構築していく具体的なイメージを持っていただきました。そして、生徒の実態に寄り添いながら、「間違えた」→「なぜ間違えた?」→「こうすれば間違えない」の流れをスキルとして身に付けさせ、その指導を積み重ねていくことが、頑健な汎用的読解力の育成のためには重要であることをお伝えしました。

 早速、先生方は職員室に来室する生徒への言葉掛けを話題にして、「意味が一意になっているか。」、「生徒に最後まで言葉を言わせているか。」など、まずは教員が言葉に敏感になる必要性があると話し合っているとのことです。

 

 

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F-labo 6月例会を開催しました(rst-laboふくしま)

6月26日(日)にrst-labo ふくしま(通称:F-labo)の6月例会が郡山市安積総合学習センターで開催されました。

F-Laboでは、福島県内の小学校から大学まで多くの先生方がリーディングスキルについて自発的に学び合いを行っています。現在はコロナ禍のため、オンラインによる配信も行っており、県外から参加してくださる先生方も増加しています。

 今回のF-laboでは、RSTへの取組について、3つの教育委員会から発表がありました。

 最初に、塙町教育委員会の有馬光一指導主事から、「リーディングスキルに関する塙町の取組」と題してお話をいただきました。塙町でリーディングスキルに関する取組が始まったのは、秦(しんの)教育長が令和元年の全国町村教育長会議で当研究所所長・新井紀子の講演を聞いたことがきっかけだったとのことです。
その後3年間、すべての小学校・中学校でRSTを受検し、その分析に基づく学習指導を行っています。町全体が一枚岩となって取り組んでいることにより、徐々に成果も上がってきており、全国学力学習調査やRSTの結果にも表れてきているとのことでした。また、RSTを受検したメリットとして、

 ・エビデンスデータを全学年持ち、共有できる。

 ・全教科、全教科書でRSを意識した取組ができる。

 ・授業改善に取り組んでいく際、教科の壁を越えてRSの視点で話し合うことができる。

などを挙げられ、塙町では今後も各園、各小・中学校の教職員が一丸となって子どもたちのリーディングスキル育成に取り組んでいきたいとのことでした。

次に、西会津町教育委員会の五十嵐正彦学校教育アドバイザーから、「西会津町における読解力(RS)向上の取組」と題してお話をいただきました。
五十嵐先生は、西会津中学校の校長時代から4年にわたり読解力向上に関わっており、試行錯誤を繰り返しながら以下の3点を中心に読解力向上に向けて取り組んできたとのことでした。

 1 「RS」を意識した授業の実践 

  ・全教科でRSを意識した授業を実践する。

  ・各教科の年間指導計画にRSを明記する。

 2 「認知機能」を育てる「朝トレタイム」の実施

  ・ゴグトレ(覚える・数える・写す・見つける・想像するための認知機能を強化するトレーニング)を朝の5分間で実施。

 3 「熟読」を核とした「読書活動」の実践

  ・「ビブリオバトル大会」の実施⇒令和3年福島県大会で優勝

授業では、本来授業のねらいを達成することが第一の目的です。そのため、ねらいを達成しつつRSも向上するのが理想です。3年間実践していく中で、「RSを意識した授業を行うことで生徒の理解が深まって」さらに「そのような授業の積み重ねによりRSも身についている」ことを実感しているとのことでした。令和3年度からは、中学校だけではなく、保・小・中を通した読解力育成に取り組んでいるそうです。

 最後に、相馬市教育委員会の青田雅子指導主事から、「令和4年度 相馬市の取組について」と題してお話をいただきました。今年度の相馬市教育委員会の取組は以下の通りです。

 ・「相馬プラン」で今年度の取組を示す。

 ・「相馬メソッド」により、子どもたちの読解力向上と学力向上のために必要な、授業改善ポイント(8つの視点)を示す。

 ・「授業お役立ちシート」を基に、子どもたちにとって親密度の低い言葉や、つまずきやすい言い回しをデータベース化する。

 ・「RSやってみましたシート」にRSの視点を意識した実践を記入し、それをデータベース化する。

 ・RST便り「サポートRST」を昨年に引き続き発行する。(昨年度は全10号発行)

 ・担当指導主事による授業参観・指導助言を実施する。

 ・公立学校研究指導員会(各校より1名推進リーダーと、校長会代表1名、教頭会代表1名が参加)を年6回程度開催し、RSTの分析、授業実践発表、成果検討を行う。

 ・小・中学校長会議でRSTに関する情報共有を行う。

相馬市では、2020年当研究所所長の新井紀子が相馬市で講演を行ったことにより全市挙げてのRST受検が始まりました。3年目を迎える今年は、何とか結果が出せるように、一丸となって授業改善に取り組んでいくとのことでした。

 

 

 

 

 



F-laboのロゴマーク。たちあおいの花言葉:「大望」「豊かな実り」。

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板橋区立板橋第一中学校での授業実践(中2地理)ーその3

6月15日、板橋区立板橋第一中学校の2学年の社会科で、「教科書を読み解きながら期末テストに備える」授業をしました。

その1では、教科書見開き2ページからの検索課題の指導法をご紹介しました。中学生でも教科書の「使い方」が身に着いていない生徒が少なくないことを実感していただけたのではないかと思います。その2では第二次・第三次産業の定義、及び教科書の資料部分を活用して、身近な企業を第二次・第三次産業に根拠をもって分類する具体例同定の指導法を取り上げました。今回は、RSTでいうところの「イメージ同定」の力を測る問3についてご紹介します。

RSTや「読み解く力」では、説明文に掲載されている非テキスト情報を「イメージ」と呼びます。グラフ・表や図、説明的なイラスト、年表、数式、譜面などがイメージに含まれます。テキスト情報とイメージと正しく結びつける力を「イメージ同定」と呼んでいます。

問3.他の工業地帯と比べたとき、中京工業地帯の特徴(とくちょう)を3つ文章で挙げなさい。

教科書の本文には、一般的な第二次産業の特徴については書かれていますが、中京工業地帯については書かれていません。(中京工業地帯の詳しい特徴は、実は小学校5年生で習います。こちらの授業の前後に学びます。)この問題は本文ではなく、教科書に掲載されている資料3「日本の工業地帯・工業地域と出荷額の割合」の帯グラフ、円グラフ、地図を読み解いて答えなければなりません。特に次の図が重要になります。

(教育出版「中学社会 地理 地域に学ぶ」169ページ、「日本の工業地帯・工業地域と出荷額の割合」より)

教科書の該当箇所で「中京工業地帯」の文字が出てくるのは、資料3だけなので、まず「検索」の力でこの図にたどり着けるか、が最初の関門になります。本文ばかり見ている生徒には「見開き2ページで『中京工業地帯』というキーワードが出てくるのはどこか、探してごらん」を促します。資料3に目が行ってしばらくしても手が動かないときは、「帯グラフのどれが中京工業地帯かな?」と尋ね、中京工業地帯の帯グラフに注目できているか確認します。

その上で、尋ねます。「ぱっ、と見て、中京工業地帯の特徴で気づくことはない?」と。

すると、多くの子は「ピンクが多い」と答えます。

「ピンクってなんだろう?」と尋ねると、「わからない」という答えが多く聞かれました。

グラフの右下に、緑は金属(工業)、ピンクは機械(工業)と読み方が書いてあるのですが、そこに至れない生徒が少なくないのです。ひとりも取り残さない教育を目指すなら、グラフの読み方を、教科書を使って、繰り返し指導する必要があることがわかります。

「ここに色分けの意味が書いてあるよ」と指すと、「あ。」とつぶやき、文章を書き始めることができました。

さて、答え合わせです。

「機械が多い」

これを書いた生徒が多数いました。しかし、これでは、「中京工業地帯には機械が多い」のか「中京工業地帯には機械工業の会社が多い」のか「機械工業の生産量が多い」のか「機械工業に従事する人の数が多い」のか、わかりません。では、わかるようにするにはどうしたらよいか。

そこで、小学5年生のときに習った(はずの)帯グラフの読み方をとり出して指導しました。

1.グラフのタイトルは何か。単位は何か。

2.全体を見て、わりあいがいちばん多いのはどれか。

3.増えているもの、減っているもの、変化がはげしいものはどれか。

4.全体の数字はどのように変化しているか。

5.共通していえることはないか。

6.全体のけいこうから、これからの変化を予想できるか。

(東京書籍 新編「新しい社会5下」6ページより)

 

 

帯グラフには、複数のものを比較する場合と、経年変化を見る場合があります。3,4,5,6は後者のための「読み方」で、1,2が今回必要になる帯グラフの読み解き方です。

資料のタイトルは「日本の工業地帯・工業地域と出荷額の割合」です。ですから、多いのは「出荷額」でしょう。(残念ながら、教育出版のこのグラフには「単位」が書いてありません。改善を期待します。)ピンク(機械)が多い、ことを表現するには、グラフのタイトルから「出荷額(にしめる)」「割合」という言葉をもってきて、先ほどの答えを補います。

「出荷額にしめる機械工業の割合が大きい。」

このように書ければ正解です。「出荷額にしめる機械工業の割合が、5割に近い。」などもよいでしょう。

多い方に注目したら次は、少ないものにも注目します。すると、ブルー(化学)や黄色(食品)が少ないことに気づきます。もう「ブルーが少ない」と書く生徒はいません。

「出荷額にしめる化学工業の割合が小さい。」

「出荷額にしめる食品工業の割合が小さい。」

などを挙げることができました。全体をながめたときに気づくのが、中京工業地帯の出荷額全体の多さです。

「日本で一番出荷額が多い工業地帯である。」

「どの工業地帯・工業地域より出荷額が多い。」

のように自発的に書ける生徒が多くいました。

ところで、資料3の地図と本文にひっぱられたのか「太平洋ベルトにある」と書いた生徒がいました。これは不正解です。なぜなら「他の工業地帯と比べたとき、中京工業地帯の特徴を挙げなさい」と問われているので、他の工業地帯と「異なる点」を挙げなければいけないからです。他の工業地帯の多くも太平洋ベルトにあります。

これで問1~問3まで答え合わせができました。最後に私は次のように語りかけました。

「問3はテストで配点が高い問題です。問3をスラスラ書けたら日比谷高校も夢ではありません。さて、問3は『頭が良くて、才能がないと』解けない問題だったでしょうか?いいえ、違います。『ピンクが多い』『ブルーが少ない』ということがわかり、グラフの読み方を覚えれば誰もが書くことができますね。誰もができるはずのことをきちとできれば日比谷高校に合格できる、ということです。」

ここで「よっし!」とこぶしを突き上げる元気な生徒が数名いました。

「ただし、『機械が多い』と『出荷額にしめる機械工業の割合が大きい』と書けるかどうか、その差が今の君たちと日比谷高校に入学した生徒の違いでしょう。」

すると、「あー、やっぱりだめか・・・」という落胆する声が聞こえます。

「大丈夫です。なぜなら、高校入試は明日ではなく1年半後にあるからです。今日から、基本の教科書の読み方、グラフや表の読み方をしっかり身に着けて学習すれば、きっと望む学校に入学することができるでしょう。」

もう一度「よっし!」と元気に言ってくれてよかったです。

今回の授業で、私はひとつも「社会科のコンテンツを教える」ということはしていません。面白い話もしていません。ただ、教科書の読み方、グラフの読み方のコツを伝授しただけです。

中学校は義務教育の総仕上げの時期です。先生方には、コンテンツを教え込むことから、じょじょに生徒の自学自習に伴走する学習支援者を目指してほしいと思います。そして、すべての子が「自学自習するスキル」を身に着けて卒業してほしいと願っています。自学自習のベースは、「説明文を読み解く力」と「説明文を書く力」です。それらは、特別な才能がなくても、適切な指導と学ぶ機会があれば(自動車の運転免許を得るのと同じように)身に着くはずの力です。そして、「学校」は、まさに、そのようなスキルを着実に身に着ける場所として、社会に存在しているのではないでしょうか。

 

 

 

今回はワークシートの問4にたどり着くことはできませんでした。私は、外部講師ですから、事前にその日授業をするクラスの状況を把握することはできません。その日、子どもたちと接して、「今日はどこまでやるか」を冒頭3分くらいで決めます。今回は、冒頭で「今日は問1から問3まで一緒に解いていきましょう」と宣言しました。(他の学校では、問2まで、あるいは問1だけ、にしたかもしれません。)

ただし、問4について話はしました。「問4をスラスラ解けるようになったら、東大に入れます」と。根拠があります。東大文系の最難関は社会科の問1の600字の大論述です。そして、東ロボプロジェクトの経験から、多くの東大合格者はその600字の大論述が「大してできていない」ことがわかっています。ですから、中学2年の段階で問4が解けるようになれば、東大合格は夢ではないのです。

そう話すと、子どもたちは、大変驚くと同時に、「どういう状態を目指して勉強していけばいいか」のイメージが多少は掴めたようでした。

 ※ちなみに、「ドラゴン桜」ではありませんので、日比谷高校→東大に行くことを子どもたちに目指させることが良いと思っているわけではありません。ただ、「ふつうにやればできること」なのに「とんでもない才能がないと無理なこと」だと思わない方が、人生の選択肢は増えると思っているだけです。

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