教育のための科学研究所(所在地:東京都中央区、代表理事・所長:新井紀子)と東京書籍株式会社(本社:東京都北区、代表取締役社長:渡辺能理夫、以下、東京書籍)は、弊研究所が提供する「リーディングスキルテスト」(以下、RST)を、東京書籍が提供する評価と学びのサポートシステム「マイアセス」上で受検し、結果を閲覧できるサービス「RST-マイアセス連携版」を開始しました。RST は、教科書や新聞など、知識や情報を伝達するために書かれた文書の意味を正確にとらえる力(シン読解力)を測定・診断するツールです。また、マイアセスは、東京書籍が提供する「調査」「結果閲覧・分析」「学習・指導」のサイクルに沿って、蓄積されたデータから効率的な指導と学習をサポートする、評価と学びのサポートシステムです。RST-マイアセス連携版では、東京書籍の販売ルートやマイアセスの ID(total ID)を利用できるため、学校・教育委員会が RST の受検を申し込む際の手続き、および、受検する児童生徒のID入力作業の負担が軽減されます。また、受検結果はマイアセスのフォーマットにあわせて表示されるため、レーダーチャートを用いた問題タイプ別の能力値比較等が加わります。【東京...
当研究所代表理事・所長の新井紀子のコメント(「AIに適切な指示を出し、その回答を自ら読み解いて判断できる本質的な理解力や読解力が必要」)が掲載されました。
日本経済新聞 4月5日米中AIの「東京大学合格記」 私たち人間はなぜ学ぶのか(記事閲覧は会員限定)
--『人工知能(AI)に東京大学の入試問題を解かせた日本経済新聞などの共同調査で、米中の最先端の基盤モデルはほぼ全学部で「合格判定」を獲得した。調査協力を得たライフプロンプト(東京・新宿)や河合塾の関係者の証言をまとめた。AIが東大生に匹敵する学力を身につけた今、人間は何のために学ぶのだろうか。
(写真提供:TED 新井紀子が2017年にTEDで講演をしたときの模様)
複数の言語の間で切り替えが行われることを「コードスイッチング」といいます。バイリンガルは、2つの言語(例:日本語と英語)の間をコードスイッチングしながらコミュニケーションをしている、と考えられます。
実は日本語の中でも、コードスイッチングは必要です。
「学習言語と生活言語」でもご紹介したように、学習の場面で使われる言語(学習言語)は、生活の中で使われる生活言語とは似て非なるものです。生活言語は、誰もが自然に身に付けることのできる言語ですが、学習言語は教育を通じて身に付けることができる言語です。生活言語と学習言語では、語彙や文法も異なります。同じ言葉でも生活言語と学習言語で使われるときに意味が違うこともしばしばです。(日本語と英語のように)生活言語と学習言語では文化背景や価値観も異なります。
そのため、授業に臨むときは、生活言語から学習言語に「コードスイッチング」する必要があります。
また、学習言語の中でも、各教科ごとに言語に違いがあります。国語と数学や理科では、分野として目指すことが違います。その結果、価値観や文化が異なり、語彙や文法も変わってくるのです。学習言語間でのコードスイッチン...
当研究所代表理事・所長の新井紀子の記事が掲載されました。
東洋経済オンライン 3月13日「教科書は読めて当たり前」が子どもをダメにする~学校では教えない、学力を決める「シン読解力」
--AIの限界と、日本の中高生の多くが中学校の教科書を正確に読めていないことを明らかにした衝撃の書『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』から7年。読解力を計測するリーディングスキルテストの受検者も当時の2万5000人から50万人に増え、日本人の読解力について、より普遍的な研究と分析が進んだ。「文学を鑑賞する」「行間を読む」こととは異なる「シン読解力」とは何か。新井紀子氏の新刊『シン読解力』から一部抜粋・編集してお届けする。
今、学校では、「教科書を中心に据えた授業」はほとんど行われていません。その問題点を、学びの空間のフェアネス(公正さ、公平さ)の観点からお話ししようと思います。
そもそも「教科書を開かない授業」がどこでどのように始まり、広まったのかはよくわかりません。1970年代くらいまでは教科書を開いて授業をするスタイルが主流でしたので、1980年代以降のどこかではないかと考えられます。
教科書を開かない授業の最大の問題点は、教師の知識や創意工夫と、学習者の狭い経験知に、正しさの根拠が委ねられてしまうことにあります。教師の創意工夫が、学習指導要領の中に正しく位置付けられる、科学的なものであればよいのですが、現状は必ずしもそうではありません。むしろ非科学的で思い込みに基づく授業を、管理職や評価者が「工夫があってよい」と評価する場面に何度も出くわしました。
そのような授業では、子どもたちは正しさの根拠を「教師の考え」に求め、教師の顔色を窺って物事を判断し、学びの空間からフェアネスが失われがちになります。例えばある4年生の授業でこんなことがありました。
先生「夜空にはたくさんの星が光っているけれど、実は星の光が地球に...
当研究所代表理事・所長の新井紀子の記事が掲載されました。
教育新聞 2月27日「シン読解力」なき自由進度学習は危うい 新井教授に聞く(記事閲覧は会員限定)
--『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)で2018年、子どもたちの読解力に警鐘を鳴らした国立情報学研究所社会共有知研究センター センター長・教授の新井紀子氏が今月、新たに『シン読解力』(同)を上梓した。タイトルの「シン読解力」とは、文学作品を味わうような“読解力”ではなく、情報を伝達する目的で書かれた教科書や説明書のような文章を正確に読解するスキル。一生涯、学び続けることが求められるこれからの時代には、極めて重要になるという。反対に、シン読解力が不十分な子どもたちに学びを委ねても、深い理解にたどり着くことは難しいとも指摘する。学校が今こそ取り組むべきことを、新井教授に聞いた。
知能テストの結果(IQ)は学力と正の相関があることが、知られています。IQのレベルに対して学力が高い人を「オーバーアチーバー」、IQのレベルに対して学力が低い人を「アンダーアチーバー」といいます。
リーディングスキルテスト(RST)の能力値と学力でも、「オーバーアチーバー」(RSTの能力値で期待される以上の学力を発揮する受検者)と「アンダーアチーバー」(RSTの能力値で期待される学力を発揮できていない受検者)がいます。
図で解説しましょう。これはRSTの能力値とテストの結果の相関係数が0.6だったときの例です。
オレンジの点はRSTの能力値に比べて学力が高い、典型的なオーバーアチーバーです。水色や緑色の点はRSTの能力値に比べて学力が低いアンダーアチーバーです。
アンダーアチーバーが実力を発揮できていないのには多様な理由があります。家庭環境かもしれませんし、単に今他に夢中になっていることがあるだけかもしれません。成績や行動に現れるので、先生も保護者も気づくでしょう。
一方、オーバーアチーバーは、努力家で、成績が良く、生活態度・授業に向かう姿勢なども良好なので、教師や保護者もサインを見逃しがちです。オーバーアチーバ...
2025年2月20日、板橋区教育委員会にて、令和6年度「読み解く力」推進委員会(第4回)が開催され、その中で、令和6年度の全国学テにおいて、板橋区の小中学校が、全国平均を大きく上回り、都の平均並みになったことが報告されました。
板橋区といえば、2017年に出版された『東京23区教育格差』(昼間たかし、鈴木士郎/マイクロマガジン社)で、「東京都学力テストの結果によると、区ごとに学力差が生じており、学力上位グループは、平均年収の高い区(港区、千代田区、渋谷区など)、下位グループは平均年収の低い区(足立区、板橋区、北区など)と、ほぼ一致していた」と名指しされた区のひとつです。
板橋区では、2018年度から、全小中学校でリーディングスキルテスト(RST)が導入し、「読み解く力」推進委員会を立ち上げ、研究指定校で「(教科書を)読み解く」を研究するとともに、クラス内格差を縮めるために、視写、音読、中学校も含めた授業の「めあて」の設定、めあての「共書き」、板書の聴書などに取り組んできました。また、RSTの6つの分野を意識しながら授業をすることを心がけてきました。その結果、大幅な学力向上と格差の圧縮に成功したのです。平均年...
多くの学校が、「自ら学び、自ら活かす子」を教育目標に掲げています。ところが、「どのように学ぶか」「学んだことをどう活かすか」の方法を、体系的に指導している学校や先生はまれです。「自ら学ぶ」ことの大切さや良さを強調するだけでは、「自学」を身に付けさせることはできません。結果的に、資質や家庭環境等によって、偶然「自学の方法」を身に付けた子だけが、「自ら学び、自ら活かす子」に育つのが現状です。
どの子にも「自ら学び、自ら活かす」力を付けるには、体系的なトレーニングが必要です。
『新井紀子の読解力トレーニング』(東京書籍)では、「ページを開く」「視写の仕方」などの基本から始め、「社会科のグラフの特徴を文章でまとめる」「算数の証明を書く」まで全12回でトレーニング方法を詳しく解説します。小中学生も楽しく読めるようにイラストやレイアウトにも工夫しました。紙上のクラスメートである、コンカワさん(キツネ)、コアラダさん(コアラ)、クマヤマさん(クマ)、ウサギノさん(ウサギ)と一緒に、教科書やノートを開いて取り組めるようになっています。登場する4人は小学5年生という設定ですが、ここで紹介する読解力トレー...
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