活動報告

相馬市教育委員会「第2回公立学校研究指導員会」で指導助言を行いました

5月17日(火)に相馬市教育委員会で開催された「第2回公立学校研究指導員会」において、当研究所上席研究員の目黒朋子が指導助言を行いました。

 

相馬市教育委員会では、令和元年度よりすべての小学校6年生から中学校3年生までリーディングスキルテストを受検し(今年度より小学校5年生から)、本テストの実施を通じて子どもたちに必要とされる「読解力」の育成に力を入れ、子どもたち一人ひとりの学力定着・向上を目指しています。
読解力育成の方針は『心豊かに 力強く 生き抜く 読解力向上 「相馬プラン」』にまとめられており、先生方の研修もその「相馬プラン」を基にきめ細かく実施されています。

 

今年度相馬市では、東京都板橋区の取り組みを参考に、小中学校の教科書を読み込み、単元で重要な言葉や児童生徒にとって親和性の低い言葉を拾い出し、「授業お役立ちシート」にまとめ、データベース化する作業が行われています。
さらには、「授業づくりワークシート」(福島県教育庁義務教育課「リーディングスキル向上実践事例集」より)を使って、RSTの6分野7項目の視点から、教科書を解像度高く読み取り、授業に落とし込んでいく取り組みも行われています。

 

今回の指導員会では、小学校5年生の社会科教科書(東京書籍)「これからの食料生産とわたしたち」のP.116~P.117を読み、「授業づくりワークシート」に落とし込んでいくワークショップを実施しました。

目黒からは、折れ線グラフや円グラフを読み取るにはイメージ同定や推論、具体例同定のチカラが必要であること、本文の中に出てくる「その一方」の「その」や、食品ロスについて説明する文の「このうち」の「この」を読み取るには照応解決のチカラが必要であることなど、RSTの6項目の視点から教科書を読むと読みの解像度が高くなり、児童生徒のつまずきに気付けるようになることをお伝えしました。

 

参加した先生方からは、以下のような感想が寄せられました。

・講師のお話は、まさに「目からうろこ」でした。グラフの変化の読み取りも「~と比べて( )倍増えている」など、書き方の手本を示すと、子どものアウトプットする力もぐんと高まること、読み取りも深まることを学んだ。

・あっという間の時間で、もっとお話をお聞きしたいと思った。「教科書を使いたおす」ということを実感するとともに、具体的に6つの視点で読み解くとおもしろいことが分かった。校内の先生方にもすぐお伝えしたい。

・改めて教科書を読み切ることの難しさを痛感し、どれだけ今まで教科書を解像度低く読んでいたかを気付かされた。RSの視点で読もうとすることで、教科書の見え方が増えていく、視野が広がることを確信した。

・「児童目線で読んでいく」ことや、「児童がすると思われる質問」を考えていくことが、より深い学びや、教科書の写真やグラフを深く読み取っていくことにつながることを学んだ。また、一つの文章や語句をRSの視点で読んでいくと、あいまいなものが明確になっていくことも研修できた。

 

 

 

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埼玉県杉戸町教育委員会で講演を行いました

5月10日(火)に埼玉県杉戸町教育委員会で開催された「令和4年度杉戸町教育研究会」において、当研究所上席研究員の目黒朋子が「リーディングスキルを活用した授業づくり」と題した講演を行いました。

 講演では、まず、RST受検後にRST事務局から送付される受検者の分析結果(csvファイル)を活用した分析方法について説明しました。「リーディングスキルを活用した授業づくり」をするためには、RSTの結果を科学的かつ客観的に分析・把握することが必要です。
一つは「マクロ」の視点で、学習集団内の読解の癖やばらつきを散布図や箱ひげ図により分析・把握します。
もう一つは「ミクロ」の視点で、読解に特徴ある個人や子ども一人ひとりの読解力の実態を分析・把握します。
そうすることにより、学習集団や個人の実態に応じた手立てや支援等を考え、授業実践することが可能になります。

 次に、教員が「解像度高く教科書を読む」ということはどういうことなのか、実際の教科書の文章を提示して、RSTの6分野7項目のどのスキルを使って読めばよいのかをお伝えしました。
また、教科書は教科による独特な表現もあり、児童生徒によってそれが読解を困難にしている可能性があります。
例として、社会科の教科書でよく見る表現である「連用中止法」を示して、社会科をよく理解するにためは、連用中止法のうちで、どれが原因で、どれが並列かを、読み解く力が大切であることもお伝えしました。

 最後に、板橋区教育委員会や福島県教育委員会で実践されている、授業実践事例について紹介し、RSTから授業を「逆算」して構築していくことの重要性についてお話しました。


参加者からは、「RSTの意義や、教科書を読むことの難しさと大切さを改めて感じた。」

「照応解決の「これ」「それ」等の指示語やゼロ照応などを確認しながら授業を進めたい。」等の感想をいただきました。

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大阪市教育センター「言語能力育成研修」で講演をします。

大阪市は全市を挙げて読解力向上に取り組んでおり、その中でRSTを導入する学校が増えています。RSTを導入する学校が増えれば増えるほど、「(うちの学校の生徒の読解力が)低くて分散が大きいことはわかったけれど、指導要領の内容も教えきらないといけないし、コロナ対策もあるし、それでなくても多忙なのに、これ以上どうすればいいのだろう?」という気持ちになるのは自然なことだろうと思います。

大阪市教育センターでは、今年度、全小中学校1枠で教員がRSTを体験した上で「言語能力育成研修」を受講する、という「言語能力育成研修」を企画しました。その研修部分の講演を新井紀子が担当し、先日収録が終わりました。

講演では、実際に中学校の理科の教科書を提示しながら、それを正確に読解するには、RSTでいう6分野(係り受け解析、照応解決、同義文判定、推論、イメージ同定、具体例同定)が不可欠であることをまずお伝えしました。

RSTの観点は決して特殊なものではありません。テキストと、図表、グラフなどのRSTで言うところの『イメージ』で構成されている教科書の内容を児童・生徒が自ら進んで読み、理解する上で避けて通ることができないものです。リーディングスキル(RS)が低い児童・生徒は、教科書を読み解くことを諦め、プリント学習や暗記学習に流れてしまいます。そういう学習では、自ら学ぶ中で好奇心がかき立てられ、さらに学ぶという好ましいサイクルを望むことは難しいでしょう。

遠回りに思えても、発達段階に合わせてRSや語彙量を伸ばすことで、「読んで理解して興味を深める」ことにつながるのです。逆に言えば、RSがない状態では、一過性の興味をひく『おもしろい授業』や最適化したデジタルドリルだけでは、教員側が期待するような学びの持続は期待し難いといえるでしょう。

これまでのRSTのデータから、入試がない公立中学1年生に比べると、同じ地域の中高一貫の公立高校の中学1年生の方がRSが圧倒的に高いことがわかっています。また、ある県の3年間の調査から、県立高校の偏差値とその高校に入学した高校1年生のRSTの能力値の平均値との相関係数が0.85あることがわかりました。県立高校の入試では、学力テスト・内申書等を総合的に判断しますから、総じてRSが高い生徒ほど、普段から学びに対して積極的に取り組む生徒だといえるでしょう。

講演では、RS先進自治体である東京都板橋区や福島県のF-Laboなどの事例を紹介しつつ、「普段の授業の中で」RSを意識した授業を進めるコツをお話ししました。

今回の講演で、いくつか質問をいただきました。以下、FAQとしてみなさんと共有します。

Q:小学5年生の担任をしています。自分のクラスの児童がどんな問題を解くことになるか知りたいです。RSTを受検するとき、大人向けではなく、小学生向を受検したほうがよいでしょうか。

A:RSTではその学年までに得ているはずの知識などで出題範囲を絞るとともに、学年配当漢字以外にルビをふるなどの配慮をしています。また小学生向けには「やさしい言い回しの指示文」が表示されます。一方、RSTの問題の難易度を見ると、出典によって難易度が大きく変わることはありません。つまり、小学校の教科書出典の問題でも、高校の教科書出典の問題でも、そのことだけで難易度が変わるということはありません。RSTは受検者の能力に最適化した問題を出題しますから、自分のクラスの「RSに課題がある子」がどんな問題を解くかを体験することはできません。むしろ、先生方は、「大人向けRST」を受検し、「自分が受け持っている子供たちは、数年後にはこういう文章も読解できるようにならなければならないのだな」と思いながら、今日の授業の設計をしていただくのが良いのではないかと思います。

Q:「イメージ同定」の「イメージ」とはどんなものを指しますか?イラストや写真ですか?

A:「イメージ=非テキスト情報」と考えてください。教科書には、図・表・グラフのほか、数式・譜面など様々な非テキスト情報が登場します。文章題を読解し、立式するという行為は、テキスト(文章題)からイメージ(式)を導く推論、あるいは同義文判定活動と考えることができます。

Q:やはりRSTを伸ばすには読書を奨励することがいちばん大切ですか?

A:読書を奨励すること自体は良いことだと思います。一方で、読書が大好きなのに、算数・数学や理科が不得意という児童生徒は少なくありません。それは、読書だけではRSTが提唱する「汎用的読解力」は身に着かないことを示しています。思い切って、読書の対象に教科書を加えてみてはどうでしょう。その日学ぶ教科の該当箇所を見開き2ページ読んでおくだけで、いつもより授業がわかる、という体験をさせてみると、子どもたちの教科書を見る目が変わるかもしれません。

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リーディングスキルフォーラム ふくしま2021 が開催されました

2022年2月27日(日)「リーディングスキルフォーラムふくしま2021」が開催されました。今回は、コロナ禍ということでオンライン配信にて実施されました。
当日は福島県内をはじめ全国から約130名方が参加され、盛況のうちに開催することができました。

 まず、当研究所所長の新井紀子の挨拶があり、その後、rst-laboふくしま(通称:F-Labo)の会員である、福島県教育庁義務教育課の加藤政記指導主事から、F-Laboの活動内容についての報告がありました。
F-Laboは、「子どもたちの読解力に対する危機感」を持っている福島県内の小・中・高・大の先生方のRST勉強会であること、読解力向上を意識した授業の在り方を検討することを通して、教員の指導力向上を図り、子どもたちの読解力向上につなげていることなどの説明がありました。
ここ1年はコロナのためにオンラインで開催されることも多くなり、それに伴い県外の自治体からの参加も増えているとのことでした。

 講演の部では、まず、『共書きそれは聴写視写 ~書かなければ先に進まない~』と題して、NPO法人授業高度化支援センター代表の鏑木良夫先生より、共書きの効果、共書きの手順、共書きの意義について、具体的な授業例も交えてご講演いただきました。
参加者からは、「実際に聴写を経験したことで、児童生徒が板書を写す時間は生徒にとって頭を使わないただの作業の時間だったということに気づかされた。言葉を意識化させるために今後授業に取り入れていきたい。」などの感想が寄せられました。

 次に、『RSTの観点で教科書を読み授業改善に活かす ~係り受け解析・照応解決に着目して~』と題して、当研究所主席研究員の菅原真悟より、リーディングスキルテストの6分野7項目についての説明、記述式テストの結果から見える児童生徒の読解力の問題点、さらには「推論」と「推測」の違いや「イメージ同定」と「イマジネーション」の違いについての話がありました。
さらに、教師がRSTの観点で教科書を読みなおし、発問を工夫し授業づくりすることの大切さについて解説がありました。
参加者からは、「具体的な例が豊富でわかりやすかった。RSTの出題意図がよく分かり、RSTの理解が深まった。イメージ同定とイマジネーションの違いなど勉強になった。」などの感想が寄せられました。

 最後に、東京学芸大学准教授の犬塚美輪先生より『教科の読解力育成を評価の観点から考える』と題した講演がありました。
「なにをなぜ評価したいのか明確化しよう」ということで、アメリカの教育心理学者Bloomの評価理論(診断的評価、形成的評価、総括的評価)にあてはめながら、多くの示唆に富んだご講演をいただきました。
最後、「Take Home Messages」として以下の4点が重要であるとまとめられました。

 ○測定・評価のためには明確な到達目標が必要

 ○RSTの意義は、主に診断的評価にある

 ○評価することは明示して教える。教えたことは評価する

 ○意識的に形成的評価を行う

 参加者からは、「RSTのスコアを向上させることが目的だと思っていたが、今回診断的評価で有効であることがわかった。日々の授業でカリキュラムとつなげて評価を考えていきたい。」などの感想が寄せられました。

 

 今後、F-Laboのような取り組みが全国に広まり、RSTを軸とした授業研究・授業実践が広まっていくことを期待したいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

F-laboのロゴマーク。たちあおいの花言葉:「大望」「豊かな実り」。

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茨木市教育委員会で講演を行いました

茨木市教育委員会は、「一人も見捨てへん教育」を実現するため令和2年度から6年度までの5か年計画で「茨木っ子ネクスト5.0」というプランを策定しました。そのプランの4本柱の一つに「確かな言語力を育む」が掲げられ、小学校のモデル校3校において昨年度からRSTを受検し、確かな言語力を育むための授業づくりが行われています。

今年度は、当研究所上席研究員の目黒朋子が依頼を受け、「令和3年度茨木市教育委員会学力担当者会」において2回オンラインで講演を行いました。

1回目は2021年6月30日に開催され、「RSTの受検結果分析と生かし方」と題し講演を行い、RSTの受検結果を正しく分析しどこに処方箋をあてていくのかを明確にすることが必要であること、教員自身が教科書を解像度高く読んで授業づくりをすることが重要であることをお伝えしました。

2回目は2022年1月28日に開催され、初めにモデル校の先生からは今年度の読解力向上のための取り組みについて、茨木市教育員会の岡田指導主事からは「昨年度より係り受け解析や照応において、全体的に能力値が向上し低位層の児童が減少している」こと、「全国学力・学習状況調査においても、国語の『読むこと』で結果が良好であった」ことなどの報告がありました。その後、上席研究員の目黒が「リーディングスキルを意識した授業づくりとは」と題した講演を行い、実際の小学校5年生社会科のリーディングスキルを意識した授業の紹介と、リーディングスキルの観点で教科書を読み授業にどのように落とし込んでいくのかについてお伝えしました。

 

茨木市教育委員会では、来年度はモデル校を中学校にも広げ、小中連携して読解力向上に向け更に取り組んでいくとのことです。

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